「マズい、泣きそう。」
「泣けばいい。」

隣にいたT嬢の断固とした間髪入れない言葉に思わず零れる。理解も扱い慣れもされてるなぁ……安心して泣ける。

17.04.20(金)Sさん送別会
10分遅れて主賓のSさんが到着。斜め後ろの席に背中合わせに座った。
T嬢と栄養の話をしていたらSさんに言われた。

「くれさんのFacebook見てたら電車を降りそこなって遅刻した!」

え?

主賓なのでお忙しく、気になったものの詳しく聞き損ねた。
昼に連絡先を交換したのは確かだ。Sさんは来週、加圧体験に遊びに来てくださる。その際の参考になれば、とピラティスな方が体験されたときの投稿もお知らせしてた。

『Facebook、めちゃレベルの高い記事でびっくり。そして面白い。くれさんは見せる文章ですね!』

なんと嬉しい。日本語長いコンプレックスが久しく、そんな褒めていただくなんて面映ゆい。あの体験記事のことかな??
予想しつつ、遅ればせながら、Sさんから入ってたLINEに気付く。

『久禮さんのFacebookで別の投稿を読んでいたら、深い話で自分も考えさせられる内容があった。
で、それを読んでいたら送別会に向かってるけど 降り過ごしました(笑)。』

どれのことだろ……?
テーブルを回ってきてくれたSさんに聞いた。……あれか。

『仕事なりダイエットなり、人が”何かをやめる”のは、期待通りの結果が得られないから。』
そして『ちゃんとした人間になりたい』。
あの話。

「私も”会社を辞める”から重なって。最後のほうは泣きそうになっちゃった。で、気付いたら降りる駅過ぎちゃって!」

で、10分遅刻。
……そんな読んで、くださったのか……。
興奮したようにすごい笑顔で話してくださる。

「すごく深く掘り下げるんですね。」
「感情がこもってて。」
「でもシステムの人だから理屈が通っててロジカルだから読みやすい。」
「文章がするする読めちゃう。」
「くれさんは、うちの会社のサイトの文章を書いた方がいい!!」

マズい、泣きそう。

「泣けばいい。」

ありがとう。
こんな褒められるなんて。

と呟いたら他の方にも言われた。

「や、褒めてるっていうより、感想ですよね。」

う。

「褒められ慣れてないからー。」

T嬢に笑われる。うぅ……

Sさんの話はピラティスな方に移る。

「私、誤解してた。あんな可愛らしい人なんですね! もっとお話ししてたらよかった。ピラティスも行ってみたかったのに。」

泣ける。泣けちゃう。
そんな感想……もらえるなんて思ってもみなかった。
あれは本当に楽しかったから……手が止まらなくてダダ漏れしてしまっただけなのに。満たされる。

私が書く目的は”自己満足””カタルシス”。
消せない欲望は”私の大好きな人たちを知ってほしい”。

欲望が満たされるって、こんな幸福感か……

ピラティスな方。
きっと、見るからに”女性の中の女性!!”なオーラをまとうSさんに全力で人見知りしたのだろう。
その壁が破られないまま、互いに退職。だからおふたりは在職中にお話しすることがほとんどなかった……

後悔が、押し寄せる。
もっと早くに、Facebookで会社の人たちと繋がればよかった。後悔してる。
“私なんかが”なんて萎縮を捨ててれば。遠慮を捨ててれば。
好きな人のことを、もっともっと”好き!!”って表現して大声で叫べばよかった。なんで躊躇したんだろ。何を恥ずかしいって思ったんだろ。
あの方の可愛らしさを知らない方が、やっぱりいたのか。
でも、私の文章を通して、知ってくださるのか。
Sさんは、そんな素直にオープンに、私の文章を読んでくださる方だったのか……そうだよな。そうだった。

Sさん。
半年くらい、か? 同じチームだったことがある。
チーム定例会議で毎週ひとりずつプレゼンをしていた。私が最後にした本の紹介。
『棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか』
あの話をとても目をキラキラさせて聞いてくれたのがSさんだった。本を読みたい!と言ってくださったのでお貸しして……ふつーに忘れてた。異動のバタバタもあり。
Sさんはずっと本を返してないのを気に病んでいたらしい。その後1年以上経ってだろうか? すごく素敵なバスソルトを添えて、本を返してくださった。そういえば!と思いだした。お貸ししたの忘れてた。
バスソルトがちょうど切れてたのでますます嬉しくて……癒された。

「くれさんのトレーニング後の疲れにいいと思って!」

Sさんがそんな想いで選んでくれた品だなんて絶対効く……美容にもよさそう……
ありがたく贅沢にお風呂につかり、満喫した。
ずっとSさんは私を見るたびに、本を借りっぱなしなのを思い出しては気が咎めていたのだと言う。私はすっかり忘れていたのに。

私は私で……
異動直前か直後だったかと思う。あることで、Sさんにちょー怒ったことがある。
“どうしてわからないのだ!”とかんしゃくを起こした。
いつも朗らかで笑い声が素敵で……そんなSさんを思いっきり、しゅんとさせた。嫌な思いをさせてしまった……嫌われただろうな、と気が咎めた。
そして仕事で関わることがなく、距離があったのだが……

「あのとき怒られたのは会社のルールを守らなかったからで、正しかったから。もっともだなぁって。」

そう、振り返ってくださった。
許されてたのか。最初から。

どうして、勇気出して話しかけなかったんだろ。お昼に誘わなかったんだろ。
所属が同じだった頃、こんなことを言ってくださった。

「家でいつもくれさんの話してるんです! こんな熱い人がいるんだよ、って。」

加圧にお誘いするきっかけになった、ある方の歓迎ランチ。
私のトレーニングに一番興味持ってくださって。一発ネタのパウンド動画を見せたら、すーーーっごい最高の笑顔で爆笑してくださった。

「だって、殴りながら笑ってるーーー!?!?」

私の顔とスマホの画面を見比べて目を丸くして爆笑が止まらなくて。照れる。
加圧に興味あるのだと話してくださり、お誘いした。ほんとにのってくださった。
その後、辞められることを知った。

どうして、もっと早くにボタンのかけ違いを直せなかったんだろ。
そしたらもっとたくさん、楽しい話が出来たのかな。Sさんを知ることが出来たのかな。
Sさんとピラティスな方の、並ぶ笑顔を見れたのかな? ピラティスをする姿も見れたのかな?
なにしてんだ、私。
いや、今からでも? かけ違いを、知ることが出来たのなら。

会も終わりに近づく。
いろんな方の、ご挨拶。続々と言葉に詰まっては、次の人にチェンジしてく。

「ちゃんとしゃべれーー!」

酔っぱらったご本人から可愛いヤジが飛ぶ。いや、あれはムリでしょう。全員、涙ぐんでる。お人柄が……しのばれる。
Sさんの送別会なのに、Sさんは私の近くの席にいらした時、ずっと私の話ばかりされてた。主賓はSさんなのに。そんなふうに周囲の人のいいとこばっかり見ては全力の笑顔を見せて朗らかに笑ってきたのだろう。
そんなの……みんな、嬉しいものな。

“元始女性は太陽であった”

この一文を、地で行く方だ。Sさんは。
顔も美しければ、身体も作られてて綺麗なライン。
中でも一番、美しいところは、目の輝きと、眩しい笑顔、表情。
造形の美しさだけじゃこうは心を打たれない。その魂はあの全開の笑顔にあふれてる。生命力が、美しい……周囲を温かく照らす。

辞める理由は、お子さま、家族との過ごし方を見直すため。でも仕事を辞めきることはできない方だろう。
いつかは子ども事業を、とお話される。

「ぜったい、形にできればヒットするんです!」

きっと、そうだろう。
いつかその事業のサイトを立ち上げる日が来たら、Sさんのこと、事業のこと……聞かせていただいて、何か書かせていただけたら嬉しいなぁ……
そんな日を夢見る。その日のために、私はもっと筆力をあげよう。好きなこと、イイ!と思ったことを全力で表現できる人間になろう。

帰り道で改めて、自分の書いた文章を読み直す。Sさんが電車を降りそびれたという、あの記事。
Sさんはやめる人で、見直す人で、始める人で、かつ、生み、育む人、か。
人間に、女性に、生まれてきたことを満喫しているオーラがハンパない。
不自由な制限があるからこそ、表現は豊かになる……仕事をする喜びも、ご家族と過ごす喜びも。自分を慈しむ、喜びも。
だからこその、あの笑顔。

私の母は半分ボケて、ようやく笑うようになった。母が笑うと家の中が華やぐ。
私は娘を向こうに預けて迷走し、ようやく笑うようになった。書く文章は何かを想起させるらしい。
娘は力むことなく年相応の、はにかんだ笑顔を見せる。それを周囲の大人が見守り、未来を夢見る。
方法や道程はどうでもよくて、ただ、”笑えば”、それだけで世界を変化させる。
そんな不思議な力を女性は持ってるのかもしれない。そんなことに気付かせてもらった。

眩しいばかりの太陽で、満開に咲き誇る花だな、Sさんは。

気付けてよかった。
すげー人、サイコーな人は、すぐ隣にいる。ほんとは。
縁をもう一回、結びなおさせてもらおう。

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